私の常駐場所であるパソコンデスクに向かっていると、窓辺で何やら音が…。振り向くと、何か異様な物体が!! しかし、直感で、網戸にへばりついているのはコウモリとわかりました。この明るさですから、羽根・翼のどれを当てはめるかの決断は後にして、“膜”が透けているのがわかります。
夕暮れ空をバックに舞っているのがコウモリと教えられた少年時代から幾十年、初めてコウモリと認識できる“本物”を見ました。
我が家の周辺は生き物にとっては最良の環境、というより、ズバリ田舎と言うことですが、それでも今迄にコウモリなど目にしたことはありません。
帰宅した妻に教えると、原村には希少種の「ウサギコウモリ」が棲息していて遠くから写真を撮りに来る人がいる、と(久しぶりに)私より詳しい情報を披露しました。さっそくネットで調べると、このコウモリは、耳の長さから普通の種でした。
表に回り、メジャーで頭から尾の先まで6センチと測っても、逃げる気配はありません。この場所が気に入ったのか、よく見る「ぶら下がる」形で固まったままです。
室内に戻り、その存在の関心が薄れた夕やみ迫る頃、「ドサッ」という音に目をやると、それは消えていました。思い当たることがあるので網戸を開けて下を覗くと、やはり、コウモリを咥えたネコが勝ち誇ったように振り向きました。我が家が巡回コースになっている住所不詳の(多分)ノラネコですが、夕暮れになって準備運動を始めていたコウモリをめざとく見つけたのでしょう。ネコは狩の名人ですから、助走なしの1.3mのジャンプで仕留めたのは間違いないでしょう。
その後、「コウモリまだいる」と訊かれましたが、コウモリにとっての悲劇的な結末は黙っていました。
翌日その場所を確認すると、クシャクシャになっていますが五割方残った黒い物体が横たわっていました。まずいのか、小骨が多いのか、残した理由はわかりません。かつて飼っていたネコが、捕らえた小鳥を咥えて“見せに来た”ことや、すでに動かなくなっている小鳥を執拗に弄(もてあそ)んでいる光景を何回も目撃していましたから、食べるためというより、狩をするという行為を本能として脈々と受け継いでいるのでしょう。
今思えば、人家の窓辺に留まるなど警戒心がまったくない、巣立ちしたばかりの幼“鳥”だったのかもしれません。